村上春樹さんのロングインタビューで言及されていたので読んでみたのですが、何じゃこれ?
「アメリカの鱒釣り」についての短編集なんですが、「アメリカの鱒釣り」が裕福な美食家だったらこんな料理がふさわしいとか、「アメリカの鱒釣り」から返事が来たり・・・「アメリカの鱒釣り」が単なる行為ではないようになってしまっています。
それに文章もこんなふう。
ライソルのにおいは詰め物した長椅子に腰を下ろし、泊まり客面して「クロニクル」紙のスポーツ欄を読んでいる。この長椅子は、わたしが今までに見た家具のうちでも、あかんぼの離乳食のように見える唯一の例だ。
読んでいるとわけがわからなくなってきて、普通の小説が読みたくなってきます。実際、通勤中にこれを読んでいて、耐えられなくなって本屋に飛び込んで別の小説を買って口直ししたことがありました。しかし、この小説の持つあっけらかんとした明るさ、予想がまったくできない展開(展開といっていいのかな)、そして不思議なユーモアに惹かれ、結局読み通してしまいました。
異国の口に合わない料理を初めて口にしてみて面食らったけれども、なじみの料理を少しつつきながら結局全部たいらげてしまった、そんな感じの小説でした。