理論社の「よりみちパン!セ」シリーズは、もともと「中学生以上」向けということで、大事なことをやさしく丁寧に書いてある印象がありました。
それに執筆者の選定も絶妙。小熊英二「日本という国」、玄田有史「14歳からの仕事道」を読んで、そう感じていたので、同じシリーズのこの本を手に取りました。
しかしこの本、少し上の2冊とは勝手が違う。
まず中身。これは中学生以上というより、大人向けだなあ。言葉もエピソードも中学生にはわかりにくそうなのが頻出するし。著者も、上の2冊のような「その世界の若手実力派」ではなくこの本で単行本デビューという人。
でもドラッグについて、丁寧に、そしていい面悪い面を公平に記述しているのは、さすが「よりみちパン!セ」と思わせるところでした。
どんなドラッグでも、一方的に断罪はしない。しかしマイナス面もきっちり示している。そういう点では、鶴見済「人格改造マニュアル」にも似ていますし、まとまり方は「マニュアル」のほうがよくできているようにも思いますが、この本で新たに知ったことも多いです。いつものようにメモしておきます。
- LSDは、もともと循環器や呼吸の促進剤を作ろうとしてできた。
- 日本では1970年2月に麻薬指定されるまでは、LSDは合法で、著名な芸術家や文学者、詩人などが実験的服用を行ない、体験記を雑誌に発表している。
- アルコールは、ほろ酔いが血中アルコール濃度0.05から0.1パーセント、致死量が0.4パーセント以上。薬効量と致死量がここまで近いドラッグはアルコールと抗ガン剤くらい。
- NAやダルク(自助グループ)の会合に出てみると、アルコールや覚醒剤依存症の次に患者が多いのが、「咳止め薬(鎮咳剤)」の依存症患者である。咳止め薬には、コデインの他、モルヒネ系のドラッグが含まれているからだ。