庭を歩いてメモをとる

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恩田陸「夜のピクニック」

夜のピクニック (新潮文庫)

[物語]
(文庫本裏表紙より引用)高校生活最後を飾るイベント「歩行祭」。それは全校生徒が夜を徹して80キロ歩き通すという、北高の伝統行事だった。 甲田貴子は密かな誓いを胸に抱いて、歩行祭に望んだ。三年間、誰にも言えなかった秘密を清算するために・・・

[感想]
前から読みたかった名作の誉れ高い(は言い過ぎか)この作品、やっと読みました。期待に違わぬ内容でした。
実は私、大学時代に軽めのアウトドアサークルにいまして、ここに出てくる「歩行祭」に似たような行事に参加していたんです。終電に乗って目的地(海辺であることが多い)の近くまで行き、残りの30kmをひたすら歩くというもの。だから「歩行祭」についての描写にはいちいち納得しながら読み進めることができました。特に印象に残ったのは、この一節。

貴子は、視界を平らに埋めるススキを眺めながら思った。
話に夢中になって、時折顔を上げた時に見た幾つかの風景が焼き付いているだけで、ほとんど何も見ていない。
けれど、確実に何枚かのショットは自分の中に残る。去年も、一昨年もそうだった。今年残る光景の中に、このススキが原は含まれているに違いない。二度と通らない、何気ない風景だけれど、この一瞬は、おそらく永遠なのだ。

ほんとにそうなんだよなあ。旅行でも仕事でもそう。いつまでも記憶に残るのは、こういう何気ない1シーンだったりすることが多いのです。

この作品の、いい意味で「青春」そのものの内容についてはいろんなところで語られているだろうからさておき、この、私の記憶に留まるであろう何気ない一節をご紹介してみようと思った次第です。


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