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庭を歩いてメモをとる

おもしろいことや気になることのメモをとっています。

Paul McCartney / Chaos and Creation in the Backyard 〜Paulの新譜を買って帰るという至福の時〜

音楽 ポール・マッカートニー

昨日は、そんなつもりじゃなかったんです。

Paulのニューアルバムが昨日、6日に入荷することは知っていました。でも一方で、DVD付きのものが22日に出るということも耳にしていました。だから、22日まで待つつもりだったんです。2週間ちょっと待ってCDもDVDもいっぺんに手に入れようと。

しかし昨日、誘惑を振り切るようにCD屋を素通りし帰宅してから、原因不明の腹痛に。夜半過ぎ、寝てからも再度腹痛で目が覚めました。この腹痛が「Paul禁断症状」なのかどうかは不明ですが、無理は体に悪いというのは間違いない事実。

ということで、今日は自分に正直になり、まずはヨドバシ梅田店に直行。洋楽新譜、StonesやClaptonが平積みされているコーナーに行くも、Paulが裏庭でギターを弾いているモノクロ写真は見あたりません。他の洋楽新譜棚も同様。店員さんに訊いてみます。

ポール・マッカートニーのニューアルバムはどこにあるんですか?」
「申し訳ありません、今日発売の分は昨日の入荷後に全部出ちゃったんですよ。すみません。」
「ああ、ならいいです、ありがとう。」

売り切れは残念ですが(反面、同志の存在はうれしく思いながら)、今度はタワーレコード梅田店へ。ここはしっかりありました。何より、ディスプレイがうれしい。ちゃんとPaul新譜のコーナーがあって(当たり前か)、ポールのポップもあって、もちろん熱い推薦コメントもしっかりある。中には、「ポールを知らない若きロックファンへ。『ベック/ミューテイションズ』『ジム・オルークユリイカ』が好きな人はきっとこのアルバムも好き」(うろ覚えですが)なんてのも。個人的には、こういう紹介をしてこそCD屋さんだと思います。

まあどちらにしても、この後には、ポールの新譜を買って帰り、そして聴くという、人生でそう何度とない至福の時がやってくるのです。レジに並んでアルバムを手に入れると、事故に遭わないように気をつけながら帰路をたどります。

自宅に。ここでパッケージを開け、CDをトレイに入れるのは「人生にそう何度とない至福の時」に失礼です。まずはシャワーを浴びます。そして、外出している妻が作ってくれている食事をあたためる。最後にキンキンに冷えたお気に入りのお酒を出して、それからトレイにPaul McCartney / Chaos and Creation in the Backyardを入れます。早く聴きたい気持ちとそれを楽しみに待つ気持ちのせめぎ合いがなんともいえません。

そして、酒を最初に口に含んだあたりで流れる"Fine Line"...この瞬間から、本当の至福の時が始まりました。「この先、人生でこの時のことを何回思い出すのかな」とふと思います。

ああ、幸せ。
このアルバムは、心にじわじわと染みこんでくるような感覚があります。

私がポールの音楽に求めるある一面が非常によく出ています。それは、意外なのにしっくりくる、バロック(ひずみ)なのにおだやか。まさに彼にしか作ることができないメロディの連発です。

例えば、"My Brave Face"のような明朗なポップスも、"Run Devil Run"で聴かせたようなロックンロールのテイストもありません。シャウト自体なかったんじゃなかったかな。あえて言えば、試聴できた"Promise to You Girl"のアップテンポ部分くらい。

じゃあ、退屈なの?と言えば決してそんなことはありませんでした。むしろ逆です。全体的におとなし目のトーンではあるけれど、曲ごとのバリエーションは幅広いんです。その上、ほとんどの曲でポールの歌い出しのメロディが、前述した「意外なのにしっくりくる」ようなもの。これ、楽譜にするとけっこうおたまじゃくしが跳ね回ってるんだろうなって感じです。

なので、その「おとなしそうに見えてけっこうアバンギャルド」「曲ごとのバリエーションの広さ」という点で、Jim O'Rourke / Eurekaに通じるものは確かに感じました(Beck / Mutationsは残念ながら未聴なのでわかりませんが。)。

それに加え、曲の途中でまた予想外の展開を見せてくれたりもします。しかし、大仰でドラマチックなものでもないんです。非常に味わい深い。おおざっぱに言えば、即興っぽさがかなり大事にされた曲仕上げになっているのです。プロデューサーのナイジェル・ゴドリッチはこのへんのポールのひらめきを非常にうまく我々に伝えてくれているように感じます。

いろいろ書きましたが、現時点での感想は「かなり気に入りそう」「ポールの新機軸であり、他のどのアルバムとも違う風味」「即興的メロディが最高」「しかし明快パワーポップがないのは残念」という感じかな。

ちなみに、腹痛はどうなったかというと、これを書き始めるまで、そんな思いをしたことも忘れ去っているくらいに消え去っていました。やはり無理を辞めるのが健康に一番ってことでしょうか。そして、至福の時に身を置くのも。

人生の大事な瞬間、堪能させてもらいました。

ちなみに、東芝EMIのサイトで全曲(ただし曲の一部分だけ)試聴可のようですね。